2.仏教の経典は、教えを説いた部分と、その教えが尊く素晴らしいものであると讃える部分からなる。当宗派は、釈尊の説かれた教えの中心部分は如來壽量品に著されているので、その原理を体得することで心の苦しみを断ち切ることができると理解している。
(なお、教えを讃える部分として有名なものは、釈尊が生まれた直後に「天上天下唯我独尊」とおっしゃられた部分などである。この部分は本当にこの様なことをおっしゃられたという事を述べているのではなく、素晴らしさの例えとして述べている。この部分は言わば宣伝のような部分であり、教えそのものではないので区別して考えねばならない。)
3.その如來壽量品に著されている原理とは、以下のような原理である。
@この世(娑婆世界)こそが浄土(苦しみの無い世界)である。
Aそれにもかかわらず、現にあるこの世の中が浄土に見えないのは自分の考え方のせいである。
B考え方を変えることにより、この世が苦しみのない世界であると理解し感じる事ができる。その時には自ずから心の苦痛はなくなっている。
4.言い換えると、以下のようになる。
世界は現実に存在しているように見えるが、実は世界を捉えているのは人間の脳であり、脳の中に捉えられたものがその人にとっての世界となる。よって、捉え方を変えればその人にとって世界が変化したことになる。従って、現実世界に苦痛を感じるのであれば、捉え方を変えることによってその苦痛をなくすことができる。
5.すると、どのように捉え方を変えればよいのかが問題となる。この点については、個別具体的事情、例えばその人の現在の考え方、置かれた状況などによって異なるため、一概には説明できない。
そのため、悩んだ問題ごとに寺院への相談することが方法の一つとなる。ただし、苦しく見える問題を別の角度から考えて見ること(柔軟な思考)が、一般的には有用な方法である。この柔軟な思考の方法については、さまざまな類型ごとにとるべき思考法が考えられており、天台大師智の講義をまとめた摩訶止観(まかしかん)で解説がなされているが、とても長い解説のためここでは紹介のみにとどめておく。